▼天声人誤

●宇宙人

金星人ではないかと思われるようなジイさんとか、土星人だろ!という感じのオバさんとかをたまに見かけるが大抵の場合彼等は地球人である。

では本当に宇宙人はいるのか?ということになるのだが、いる、いない、の前に、仮にいたとしても地球人が遭遇できる確率は極めて低いということを理解しておかなければいけない。

地球が誕生したのは47億年前であり、人類が誕生して10万年。そしてその人類が文字や絵によって見たものや聞いた事を記録に残し、後世に伝えられるようになってからは、せいぜい5千年。大気圏外の宇宙に出る手段を開発してから50年程度である。

人類が生存している期間が10万年の場合、それは地球の歴史の中の約1/5000だ。つまり宇宙人が地球にやってきたとしても5000回来ないと地球人に会えないという計算だ。さらに文明を持った地球人に会える確率は1/100000となる。

仮に地球と同じような惑星が存在し、そこに人類と同じような高等生物がいたとしても、同時期に存在できる確率は 1/5000の2乗となり、お互いが宇宙空間内で遭遇できる確率は1/10000000の2乗となる。宇宙の誕生が137億年前とすれば、その中の47億年という期間も考慮する必要があり、さらに確率は低くなる。

ということで、時間軸で考えた場合には確率的には限りなくゼロに等しい。仮に地球人がこれから先高度な文明を維持しながら100万年生存し続けたとしても確率的には焼け石に水であろう。

時間軸で考えた場合には別の問題もある。地球は24時間で自転しているわけだが、人類はこの24時間を基準にして生活パターンや行動する速度が自然に決まってきたはず。しかし他の惑星の自転速度が同じである可能性は少ない。

仮に48時間で自転する惑星の宇宙人は地球人より動きが倍遅くなる。歩く速度も喋る速度も倍かかるわけだ。子供でもボブサップのような低い声で笑うのだ。このテンポに合わせて平和条約交渉とかしなければいけない。寝てるのかと思ったら瞬きだったなんてこともあるだろう。

逆に2時間で自転する惑星の宇宙人は非常に忙しない。12倍の速度で行動されたら、とてもついてはいけないだろう。寿命も4〜5年程度かもしれない。

問題は時間だけではない。「大きさ」というのもある。宇宙人の生息する惑星が地球と同じサイズである可能性は低い。そしてそのサイズによって重力が異なるわけで、仮に水星程度の惑星から来た宇宙人は地球上の重力に耐えられなくて立ってはいられないだろう。

生体によっては自らの重さで潰れてしまう可能性もある。反対に土星クラスの惑星から来た宇宙人は、おそらくその惑星の重力に耐え得るためにゾウとかカメのような体型をしているだろう。極端な場合はアワビのようになっているかもしれない。

以上のような、時間、サイズは、あくまでも地球という惑星を基準とした考え方の範疇ではあるのだが、宇宙というところは天文学的数値に匹敵するほど広く、中には我々の尺度では考えられない惑星もあるかもしれない。

自転速度が0.5秒とか、サイズが地球儀ぐらいの惑星で生命が誕生しているのかもしれない。もしかしたらそういった惑星から来た宇宙人は既に地球に何度もやってきてはいるのだが、我々が気付いていないだけなのかもしれない。超高速で動いている極小の体を持つ彼等にとっては、我々人類は地殻変動並みの超低速でしか動く事のできない超巨大物体にしか写っていないのかもしれない。

では、そのような超小型の惑星で生命は誕生するのか?一般的には水が存在しないと生命の誕生は困難とされている。地球ほどの大きさがないと重力で表面に水を貯えておくことは出来ないとも言われている。しかし我々生物が生命を維持するために必要な酸素は、もともと猛毒物質でもある。猛毒ではあるのだが、その酸素が大量にあったがために、それを利用して生きる生命が自然と発生したわけだ。

仮に酸素が無いとしたら、水素を吸って生きる生命が誕生したかもしれないし、ヘリウムを吸って生きる生命であるかもしれない(声はかん高くなるかもしれないが)。また、場合によってはセシウム-137を吸う事で生命を維持する生き物になる可能性もある。ガミラス星人とかがそうだ。放射能の中で進化してきたにもかかわらず顔色が悪い点を除いてはほぼ人類と同じ体型をしている。進化の力とは恐ろしいものである。

もう一つ、忘れてはいけないのが距離である。生命が生息する可能性がある惑星には必ず地球の太陽に当たる「恒星」が存在しなければならない。しかしその恒星、地球から最も近いケンタウルス座のプロキシマ・ケンタウリでも地球からの距離は4.22光年だ。現在のスペースシャトルでは16万年かかる距離にある。しかもこの恒星が地球と同じような惑星を持っているという説は無い。

近年の観測で、地球と同等の惑星の存在も明らかになっている。グリーゼ876d、OGLE-2005-BLG-390Lbなどだが、グリーゼ876dは地球から15光年離れたところにあり、スペースシャトルでは57万年かかる。OGLE-2005-BLG-390Lbに至っては2万光年先あり、スペースシャトルでは7億6000万年かかる。

しかもグリーゼ876dは恒星の至近距離をわずか2日足らずで公転し、表面温度は数百℃に達することから生命が存在する可能性は極めて少ないとされている。OGLE-2005-BLG-390Lbのほうは逆に表面温度は‐220℃と考えられている。この温度では水、アンモニア、メタン、窒素などはすべて凍ってしまい、こちらも生命の存在は期待できない。

仮に光速に限りなく近い速度で移動できる宇宙船が開発されたとしよう。それでもOGLE-2005-BLG-390Lbまでは2万年以上かかるのだ。また仮に生命が存在しうる惑星があったとしても、その惑星までの距離は光の速度で数万年以上を覚悟しておかなければいけないだろう。

いずれにしても人類が宇宙人に遭遇できる可能性などというものは皆無と言ってもいいだろう。ただし「ワープ」などというものが実現すれば一気に真実味が増して来るというのも事実だ。

しかしワープを肯定するということは相対性理論を覆すということにもなってしまう。というか現実的には「あり得ない」ことであろう。しかし、その昔、人間が鉄でできた乗り物に乗って空を飛ぶなんてあり得ないと多くの人が思っていたはずである。もしかしたらあり得るかもしれない。いや、やはりあり得ないだろう。

※2015年現在、上記よりも多くの地球型惑星が発見されている。

天声人誤

メニュー




.