▼天声人誤

●タイムマシン

未だにタイムマシンというものはこの世に存在しない。なぜ存在しないかというと、相対性理論だのという難しいことを考えるからだ。時空がどうのとか光の速度がどうのとか考える前に、なぜ実現しないのかということをじっくりと考えてみる必要がある。

今までタイムマシンが完成しなかった最も大きな問題は、移動する先の時間にアンカーが打たれていないということだろう。フラグが立ってないと言っても良い。つまりいくら高性能なタイムマシンが出来たとしても、その移動する先に受け入れ態勢が出来ていなければ移動はできないのだ。

この考え方に基づきタイムマシンを作ってみることにした。ただしこの理論では未来への移動はできない。未来にアンカーを打つことはできないからだ。まあ、これについては他にもっと高性能なタイムマシンを誰かが作ったときにやってもらうこととして、とりあえずは過去限定のタイムマシンを作ることにした。

まずは自分の脳の中にある情報を全て書き出し超大容量記憶装置に保存する。これは現在の技術力を持ってすればさほど難しいことではない。個人差はあるものの、普通の人間であれば100TB(テラバイト)あれば充分だ。ということで頭にエモティブ社の脳波検出用ヘッドセットを装着して脳波を出力する。

ではどのくらいの未来に、今打ったアンカーにアクセスするかということなのだが、まあ、実験なので、とりあえず5分後にやってみることにする。5分後に今記録した記憶装置の自分の脳にアクセスし、データを上書きすれば良いわけだ。

ヘッドセットを装着してじっとすること30分。全てのデータを保存することができた。つまりアンカーが打てたことになる。

さてこれで準備は整った。あとは5分待つだけだ。問題はその5分間どうやってヒマをつぶせばいいのかだ。意外に長いものだ5分。いや待てよ、なにも5分でなくてもいいではないか。3分、いや1分でも実験が成功することには変わりはないはず。いや待て待て、実験というのは寸分の狂いもなく行わなければいけない。などと考えているうちにもしかして2分ぐらいは経っているかもしれないと思い時計を見る。

45秒しか経過していなかった。すごくがっかりだ。

あ。もし1分だとすればあと15秒ではないか!やはり5分ではなく1分にしよう。あと8秒だ。7、6、5、4、3、2、1、よっしゃ!と同時に1分前の自分の脳にアクセスしてみる。

すると、さてこれで準備は整った。あとは5分待つだけだ。問題はその5分間どうやってヒマをつぶせばいいのかだ。意外に長いものだ5分。いや待てよ、なにも5分でなくてもいいではないか。

3分、いや1分でも実験が成功することには変わりはないはず。いや待て待て、実験というのは寸分の狂いも なく行わなければいけない。などと考えているうちにもしかして2分ぐらいは経っているかもしれないと思い時計を見る。45秒しか経過していなかった。すごくがっかりだ。

あ。もし1分だとすればあと15秒ではないか!やはり5分ではなく1分にしよう。あと8秒だ。7、6、5、4、3、2、1、よっしゃ!と同時に1分前の自分の脳にアクセスしてみる。

すると、さてこれで準備は整った。あとは5分待つだけだ。問題はその5分間どうやって…

といった具合で1分間を永遠に行き来し続けるタイムマシンの実験が成功した。
天声人誤

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