▼天声人誤

●消防署

消防署が火事になった。よくあることだ。車庫の奥から上がった炎が4台ある消防車の後方に燃え移りつつあった。発見した消防士は2階に駆け上がりドアを開けて叫んだ。

「か、火事だ!」それを聞いた消防署長が椅子からガバっと立ち上がり叫んだ。「は、早く電話しろ!」「はい!」と消防士。机の上の受話器を左手でつかみ、119番に電話をする。隣の机の電話が鳴る。消防士がその受話器を右手で取りながら左の受話器に向かって叫ぶ。

「か、火事です!」同時に右の受話器から叫び声。「か、火事です!」そのまま署長のほうに向かって叫ぶ消防士。「署長、か、火事です!」これを聞いた署長。「な、なに!どこだ!?」消防士が右の受話器に向かって叫ぶ。

「ど、どこだ!?」すると左の受話器から「ど、どこだ!?」と叫ぶ声。これを聞いた消防士が署長に向かって、「どこだ!?と、聞いています!」これを聞いた署長、「こ、ここだ!早く行け!」これを聞いた消防士、両方の受話器を同時に置いて階段を駆け下りる。とすぐに戻ってきて叫ぶ「か、火事です!」これを聞いた署長、「なに、は、早く電話しろ!」すぐに電話に向かう消防士。受話器をつかもうとした瞬間、その電話器が鳴った。

受話器をつかむ消防士。電話の向こうから叫ぶ声。「か、火事です!」「ど、どこだ!?」と聞き返す消防士。「栄町1-2-3番地です。メゾン・ド・ファイアーモエルの2階が燃えてます。すぐ来て下さい!」「わかった!すぐ行く!」と答える消防士。そして署長に報告する。

「栄町1-2-3で火事です!」「よし!すぐに行け!」と指示する署長。急いで階段を駆け下りる消防士。とすぐに戻ってきて叫ぶ「か、火事です!」「よし!すぐに行け!」と指示する署長。

消防士が車庫に下りると既に4台の消防車の後方が燃え上がっていた。署長が指示を出す。「よし、とりあえず1台は現場に向かえ!4人乗って消防車を消火しながら走れ!」「はい!」と消防士たち。

「残りの者は残りの消防車の消火に当たれ!」「はい!」と消防士たち。ということで、とりあえず1台の消防車が出動した。ウ〜〜〜〜ウ〜〜〜〜

出動した消防車の隊長が指示を出す。「運転手以外が消火に当たれ!」「消化器が見つかりません!」「置いてきたのか?」「いえ、消化器と消防車が同じ色なので見つかりません!」「よく捜せ!」「火も同じ色です!」「いいからよく捜せ!」「あ、ありました!」「どこだ!」「後ろです。燃えてます!」「ではホースで水をかけろ!」「はい!」と言って走っている消防車の上で巻き付けてあるホースを器用に外す消防士たち。

「隊長!水が出ません!」「なに!?水も燃えたか!?」「いえ、最初からありません!」「置いて来たか!?」「現場に行けばあります!」「そうか、現場に急げ!」さらにスピードを出す消防車。ウ〜〜〜〜ウ〜〜〜〜

隊長が尋ねる「状況はどうだ!?」「火の車です!」「どのくらい火の車だ!?」「あ〜、あっちっちっちっ!というくらい炎が近づいています!」「後ろから来ているのか?」「そうです!」「よし、もっとスピードを上げて前方への延焼を食い止めろ!」ウ〜〜〜〜ウ〜〜〜〜ウ〜〜〜〜ウ〜〜〜〜ウッ..ウッ。 「どうした!?」「サイレンが燃えました!」「鳴らないのか!?」「鳴りません!ダメです!」「よし!、みんな口で叫べ!」「はい!」そして消防士達は消防車から身を乗り出してホエザルのように叫ぶ。ワウ〜〜〜〜〜ワウ〜〜〜〜〜

「た、隊長!」「こら!喋るな!叫べ!」「あ、はい。ワウ〜〜〜〜〜ワウ〜〜〜〜〜」「た、隊長!」「何だ!喋るなと言っただろう!音量が落ちると周囲の車両が音が聞こえずスピードが出せないじゃないか!」「あ、はい。ワウ〜〜〜〜〜ワウ〜〜〜〜〜」炎に包まれながら猛スピードで走る消防車。そこには狼男のように叫ぶ消防士たち。ワウ〜〜〜〜〜ワウ〜〜〜〜〜

「現場はまだか!?」と尋ねる隊長。「はい、とっくに行き過ぎました!」「な、なに!?なぜもっと早く言わん!?」「あ、だから先ほど報告しようとしたのですが、隊長が叫べと。。。」そうしてる間に炎は運転席近くに達していた。そして運転手が叫ぶ。「いいから叫んでください!スピードが出せません!「あ、すまん、そうだったな。ワウ〜〜〜〜〜ワウ〜〜〜〜〜」

と叫ぶ隊長。負けじと大声で叫ぶ消防士たち。ワウ〜〜〜〜〜ワウ〜〜〜〜〜。そして負けじとスピードを上げていく運転手。

天声人誤

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