▼天声人誤

●ハエ

もし人間がハエの大きさであった場合、一般家庭の床から天井までの高さは約300mになる。その天井に逆さにとまるのである。特に掴まるような物はない。手と足のヒラに何かのりみたいなものがあらかじめ塗ってあって、その接着力だけでくっつくのである。下をみれば300mだ。壁面にもとまる。頭を下にしてである。ロシアの高所動画よりもコワい映像のはずである。

飛んでいる先には、クモの巣とかがある。直径1cmの表面がベトベトのロープでできたネットだ。直径が1cmもあれば、すぐに気が付くので大丈夫などと思ってはいけない。なんせ人間がハエの大きさに換算すると時速約100kmで飛んでいるのだ。見つけた時にはもう遅い。体長約4mの、頭の大きさが牛の3倍くらいのクモに食べられてしまうのだ。

物心がついた時は実はハエではない。ウジである。問題は生まれた場所にある。腐乱した動物の死骸の中であったりする。その死骸が人間の場合もあるが、それは大した問題ではない。死骸でない場合もあるが、その場合の多くは大便の中である。からだの周り全てが死骸の腐乱した肉や皮膚、又は大便である。そしてからだの周りの大半がそこに密着している。ものすごく臭い。殺人的な臭さだ。しかし考えなければいけない。親がなぜあなたをそんなところに生み落としたのかを。それは栄養があるからだ。だから喰うのだ。犬の死骸のドブに浮いたやつの腐乱した肉や皮膚、又は大便を。腹をこわす心配などしている暇もなく喰うのだ。

でも安心して欲しい。きれいな所で物心がつく可能性もないことはない。人工的に養殖している場合もあるからだ。しかしなぜウジなどを養殖するかというと、サシ(釣り餌)にするためである。

そろそろサナギにでもなろうかと思っているころに、人間という体長約170mの怪物につまみ上げられ、直径約10cmのJ字型の金属の錨のようなものが近付いてきて、そのJの鋭く尖った先端があなたのケツの穴から頭のテッペンに突き通されるのだ。ものすごく痛い。そのまま水の中に放り込まれ、体長約30mの巨大魚に喰われるのを待つのだ。

天声人誤

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