▼天声人誤

●テレビ

テレビとはTelevisionの短縮形であるが、ずいぶん変なところで切ったものだ。これを肯定するならば、電話はテレホ、望遠鏡はテレス、電報はテレグ、テレックスはテレッ、になる。

Teleとは、遠い、とか遠隔の、という意味である。とすれば、遠隔操作自動車はテレカ、遠洋の鮫はテレジョーズ、遠くから着た顧客はテレクラ、不在者投票はテレチョイス、7ピンを倒してスペアをとるのをテレピン、離れていても匂うヤツはテレクサイ、遠くに隠せばテレカクシ、遠くの喫茶店はテレサテン、遠くのちゃんとしたやつはテレチャン、遠くまで弾が届く大砲の台座がテレホーダイ、日本の遠くが日テレ、遠くの東がテレ東、遠くのタマがテレ玉、とかになる。

テレホではなくテレホンと略されるのが電話である。その昔、各家庭には黒電話と呼ばれている装置があった。北の偉い人が頭に乗せているあれだ。そしてその黒電話とは電気製品の一つであると思っている人が多いが、実は違う。ふつう電気製品は電気洗濯機、電気冷蔵庫、電気掃除機、電子計算機、電子炊飯器のように名前が長い。電卓も元は電子卓上計算機である。電話は最初から電話であった。

しかし名前が短いこととは関係なく、黒電話が電気製品でない最も大きな理由は、停電の時でも使えるということだ。黒電話は電気が無くても使えるのだ。

他に電気が無くても使える電気製品といえば、ゲルマニウムラジオである。ようするに黒電話はゲルマニウムラジオのちゃんとしたやつなのだ。

話しをテレビに戻す。接頭辞としてはTeleが多いが、省略語の接尾辞で多いのは「コン」であろう。パソコン、ファミコン、スパコン、リモコン、生コン、ラジコン、などがある。

パソコンはパーソナルコンピューターの略であり、そもそもがパーソナル(個人)で使用するものであるのだが、それを家族や事務所で共有したりするからややこしいことが起こるのだ。家族で共有するのはパソコンではなくファミコン(ファミリーコンピューター)だ。だからファミコンはファミリーで使うコンピューターであったのだ。であるから専用のキーボードもちゃんとあったのだ。嘘ではない。

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